新型コロナウイルス感染症とダウン症に関するQ&A
新型コロナウイルス感染症とダウン症に関するQ&A
最終更新2020年4月12日 日本ダウン症学会
Q&A更新履歴
アメリカのダウン症関連の複数の団体より、2020年3月27日付で「COVID-19とダウン症」というQ&Aが発表されました。
Q&A on COVID-19 and Down Syndrome(米国ダウン症協会(NDSS)での公開ページ、各団体で関連ページあり)
これを参考に、日本の事情に合わせて日本ダウン症学会で抜粋・記述したものを公開します。
※このQ&Aは、医療専門家の助言に代わるものではありません。 医学的アドバイスは、医師または他の医療専門家に受けてください。
症状、ウイルスの拡散と予防、および治療に関するCOVID-19の一般的な情報は、DSのある方についても同じと言えますか?
はい。 COVID-19に関する情報は、DSのある方にも同じです。公的な情報は更新されていきますので、国や自治体からの発表あるいは日本小児科学会のホームページおよび厚生労働省のホームページの「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」をごらんください。
DSのある方はCOVID-19に対して「リスクが高い」ですか?
とくに60歳以上の人々や基礎疾患のある場合は、重症となる可能性が高いようです。一方、年少の子供も症状が重くなる可能性はありますが、ほとんどは回復します。DSのある方がCOVID-19に感染し、重症化しやすい可能性が高いかどうかはまだ不明ですが、一般的に、DSのある方は感染症にかかりやすく、また他の医学的問題を抱えていることが多いことから、COVID-19によって症状が強くでる可能性があるといえます。ですので、DSのある方も、感染を防ぐためにいま推奨される予防策に従うことは非常に重要です。
DSのある方のうち、どのような合併症があるととくに高リスクといえますか?
DSのある方のうち、以下の病気や症状が未治療あるいは治療中である場合、COVID-19感染のリスクが高くなるといえます。
- 心臓の疾患
- 慢性的な呼吸器疾患
- 重症の呼吸器感染症の既往
- 喘息
- 閉塞性睡眠時無呼吸
- 以下のような理由で免疫機能が低下している可能性がある人:
- 糖尿病
- 腫瘍性疾患に対して化学療法を受けている、またはその他の強い治療を受けている
- 免疫力を低下させる特定の薬を服用している(関節リウマチ、SLEの治療など)
DSのある方のどのような行動や状況に特別な配慮が必要ですか?
DSのある方のコミュニケーション、学習、理解にはさまざまな違いがあります。中には、「ソーシャル・ディスタンス」を意識し他の人と距離をとりマスクをつけるなど感染の拡大を防ぐことについての理解には特別な支援を必要とする方がいます。体調が悪い時に、自分の症状が理解できない、またはどう伝えればいいか分からないことがあります。そのため、周囲の人々が細心の注意を払う必要があります。
DSのある方がCOVID-19について理解し、健康を維持する方法を教えてください。
DSのある方は、他の人の感情に非常に敏感です。すでに多くの人は、「何かが起こっている」と気づいているでしょう。あまりニュースを見せすぎないようにしてください。あなた自身のことばで情報を伝え、質問に答えることが大切です。怖がらせ不安を煽らないよう、あなた自身がパニックにならずに落ち着いて、わかりやすい言葉や絵などを使って必要なことを伝えてください。できるだけ同じスケジュールで毎日を過ごすようにしてください。以下のような方法が役立ちます:
- 落ち着かせる最も良い方法の一つは、自分自身を守ることが、同時に他の人たちも守ることができると感じさせることです。
- 距離を保って笑いあったり、手を振ったり、社交を楽しんだりすることは良いことですが、抱き合ったり、握手したり、他の人に触れたりすることはよくないと説明してください。
- 手洗いの基本は流水と石けんを使って約20秒洗うことです。手洗い習慣をつけてください。「きらきらぼし」や「ハッピーバースデーの歌」など、20秒になる歌を歌いながら洗うと覚えやすいです。
DSのある方にとって外出は安全ですか?
現在、不必要に出かけることは勧められません。一部の地域はすでに移動を制限しています。DSのある方がどこかに行く必要がある場合は、地域の自治体の指示に従い、混雑する可能性が低く、混雑が少ない時間帯に交通機関を利用してください、そして、頻繁に手を洗ったり、手指消毒剤を使用したりすることを忘れないでください。
DSのある方々がストレスを軽減し、健康を維持するには何が役立ちますか?
DSのある方は、ルーチンや環境の突然の変化に非常に敏感な場合があります。できるだけ日常のスケジュールを保ち、同じ生活を繰り返すことができるようにしてあげてください。また、まわりの人の心配や動揺にも敏感です。テレビのニュース番組を流しっぱなしにしないでください。不安や気分の落ち込みのある人は特に支援が必要になるでしょう。大きく深呼吸し軽い運動をすると、心が落ち着きリラックスできます。心配なときは医師に相談しましょう。
- 服を着替え、その日の準備をする、というような日常生活のルーチンを守るようにしましょう。
- 睡眠スケジュールを守ります。
- 健康的でバランスの取れた食事を摂りましょう。感染を予防または治療する特別な食品や栄養素はありません。
- 感情にまかせた食事、節操のない食事、何かに退屈したら食事、といった食習慣は避け、バランスのとれた食生活、3度の食事を守ってください。
- 許可されている場合は、短時間でもよいので外を散歩しましょう。他の人から約2メートル離れてください。屋内と屋外の両方でできる運動メニューを作ると役立つ場合があります。
具合が悪くなった場合、DSのある方はいつ医師または病院に行くべきですか?
軽い症状のある人は自宅に留まり、クリニックや病院に行かないようにしてください。軽い症状(鼻づまりなどがあるが、それ以外は普通に時間が来れば飲食をし、呼吸に問題がない場合など)は、医師に電話をしてアドバイスを受けてください。重篤な症状が見られた場合は、遅滞なく医師または病院に電話して、どこに行けばよいかアドバイスを受けてください。
DSのある方の唯一の介護者である自分自身が体調が悪くなったり、検査陽性の場合、または病院に入院する必要がある場合、どのようにすればいいですか?
検査で陽性でも症状が軽く自宅療養となった場合、自宅で他の家族との距離を保つ必要があります。あなた自身に隔離が必要となる、あるいは入院となった場合は、その間DSのある方のケアをだれかが行えるよう計画する必要があります。家族や親戚以外の方、地域の福祉サービス、ケースワーカーに連絡して相談してください。
※2020/4/10現在、検査陽性でも軽症や無症状の場合、必ず入院とはならない状況に移行しつつありますし、すでにそのようにされている地域もあります。しかし、陽性であれば社会的隔離が必要になりますので、その時のことを考えた準備が必要でしょう。 参考 国立感染症研究所「新型コロナウイルス感染症、自宅療養時の健康・感染管理(2020年4月2日)」
DSのある方の場合、認知症またはアルツハイマー病があるとCOVID-19感染リスクが高くなりますか?
アルツハイマー協会(米国)は、「おそらく認知症はCOVID-19感染のリスクを増加させない」と述べています。ただし高齢であることと、認知症によって手を洗うのを忘れたりマスクをしないなどの行動によって、感染する可能性は高くなります。また、嚥下障害や誤嚥性肺炎のリスクが増加するので、COVID-19による肺炎から細菌性肺炎へ重症化する可能性があります。その場合、会話ができなくなる、気持ちが不安定で混乱が見られる、動かなくなるなど突然行動に変化が出ることがありますので、こうしたことに注意してください。
更新履歴
2020/4/8 新規公開
2020/4/10
Q「DSのある方の唯一の介護者である自分自身が体調が悪くなったり、検査陽性の場合、または病院に入院する必要がある場合、どのようにすればいいですか?」について
A「検査で陽性であってもほとんどの人は入院を必要としませんが、他人からの社会的隔離を維持する必要があります。」
を
「検査で陽性でも症状が軽く自宅療養となった場合、自宅で他の家族との距離を保つ必要があります。」と修正、脚注追加
2020/4/12
囲み記事の部分「終息」を「収束」に修正