大阪大学大学院医学系研究科 小児科学講座 北畠 康司
June 4, 2021
コロナ感染ばかりが注目されていますが、RSウイルス感染症をご存じでしょうか。いま、例年とは異なるRSウイルス感染の急激な増加が大きな問題となっています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス(respiratory syncytial virus)とは、かぜなどの呼吸器感染症の原因となるウイルスの一種です。赤ちゃんがかかりやすい代表的なものの一つで、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ全ての赤ちゃんがかかります。またウイルスに対する免疫がつきにくいため、繰り返し感染します。
多くは軽い鼻かぜ程度でおさまりますが、生後数週間~数カ月の乳児期早期に、RSウイルスに初めて感染した場合は、細気管支炎や肺炎など重い症状を引き起こし入院が必要になることがあります。乳幼児の肺炎の約50% 、細気管支炎の 50~90% が RSウイルス感染症であるといわれます。
例年は、RSウイルス感染症は冬期に感染のピークが見られ、夏期は少ない状態が続いていました。しかし2020年はこの冬期のピークが見られず、今年は1,2月頃から流行が始まり、4月以降急激な増加が見られています。全国的に報告数が増えていますが、なかでも近畿や北陸地方では例年のピーク時に匹敵する増加数で、注意が必要です。
ダウン症のある赤ちゃん、低出生体重児、心臓や肺に基礎疾患がある方、免疫不全が存在する方は重症化しやすい傾向があるのでとくに厳重な注意が必要です。
どうやって感染するの?予防法は?
RSウイルス感染症はRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、又は会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛まつ感染や、感染している人との直接の濃厚接触、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったりなめたりすることによる間接的な接触感染で感染します。RSウイルス感染症であるとは気付かれてない年長児や成人がいるため、咳などの症状がある年長児や成人は、できるだけ0・1歳児との接触を避ける、あるいはできるだけマスクを着用して接することがたいせつです。また接触感染に対しては、日常的に触れるおもちゃ、手すりなどをこまめにアルコールなどで消毒し、手洗い・手指衛生を行うことで防ぐことができます。
どんな症状が出るの?
感染したときの症状は、通常RSウイルスに感染してから4~6日間の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁、咳などの上気道症状で始まります。初感染乳幼児の約7割は、鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに軽快しますが、約3割では炎症が下気道に拡大し、激しい咳やゼイゼイヒューヒューといった喘鳴が出現します。さらに浅い呼吸が増える(多呼吸)、のどの下や胸の下のあたりがペコペコとへこむ呼吸(陥没呼吸)などの症状が見られれば呼吸困難のサインですので早めにかかりつけ医に相談しましょう。
治療法は?
RSウイルス感染症に有効な特効薬はなく、基本的に脱水に対する輸液や呼吸困難に対する酸素投与や吸入療法などが行われます。
ワクチンもありませんが、リスクの高い赤ちゃんには重症化予防のためのモノクローナル抗体製剤(パリビズマブ;シナジス®)の投与が行われます。早産児、生後24ヶ月齢以下の肺・心疾患のある赤ちゃんやダウン症のある方は適応となりますので、主治医と相談してみてください。
